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        労働契約締結の注意点

労働契約締結時の労働条件明示義務
労働基準監督署の事業所調査において、法定三帳簿(労働者名簿・賃金台帳・出勤簿)や就業規則と並んで、よく調査の対象となるものが「労働条件通知書雇用契約書)」です。
これは、事業主が労働基準法で定められた労働条件明示義務を履行していないことが、後々の労使間トラブル発生の最大の原因となっているケースが多い為です。
労働契約は諾成契約ですので口約束だけでも成立しますが、労働法令は賃金・労働時間・休憩・休日・解雇事由などの重要な労働条件については口頭明示を認めていません。
また、民事的には「契約自由の原則」から、その契約内容が公序良俗や信義則などに反しない限り、契約当事者間の合意が有れば如何なる内容の契約を締結しても自由ですが、労働法令は、労使間の労働契約については違約金・賠償予定額・前借金相殺・強制貯金などを定める契約を禁止しています。
また、法定の最低賃金を下回る給与額、法定労働時間を上回る所定労働時間など、労働法令に違反する労働契約内容は、無条件に労働法令で定められた基準まで引き上げられます。
尚、明示する労働条件の内容が就業規則の内容と同じである場合は、その就業規則の該当条文番号を明示して就業規則(の写し)を手渡すことでも足りる、とされています。


法律で規定された労働条件明示事項
事業主が労働者と労働契約を締結する時に、必ず書面で明示しなければならない事項は次に掲げる通りです。
尚、「書面で明示しなければならない」とは、その労働条件明示書類が労働者に交付されると同時に、その会社控えが会社に保存されていなければならないことを意味します。
1.雇用契約期間の有無
  有期雇用の場合は、その契約期間(原則3年が上限)と契約更新の有無
  更に、契約更新有りの場合は、更新可否の判断基準と雇止め事由
2.入社後の就業場所、及び業務内容
  (変更する可能性が有る場合はその旨の記載が有った方が良い)
3.始業/終業時刻と休憩時間
  交替制勤務の場合は就業時転換に関する事項
4.所定休日、有給休暇・無給休暇
5.所定労働時間超の労働(残業又は休日出勤)の有無
6.賃金の決定方法・計算方法・支払方法、及び締切日と支払日
7.退職に関する事項(退職時の手続きなど)
8.具体的な解雇事由(どういう場合に解雇を行なうのか)

更に、1週の所定労働時間がフルタイム労働者より短いパートタイム労働者については、上記の1〜8に加えて以下の事項も書面で明示しなければなりません。
9.昇給の有無
10.賞与支給の有無
11.退職金支給の有無
※雇用契約期間についての具体的な定めが無い場合は、例え臨時アルバイト募集やパートタイマー募集で採用した従業員であっても、正社員と同様の「雇用期間の定めの無い終身労働契約が締結されている」とみなされてしまいますので注意して下さい。
また、上記5(所定労働時間超の労働の有無)も軽視されがちですが、「所定労働時間を超える労働有り」ということを明確にしておかないと、労働者に会社の残業命令に対する拒否権を与えることになってしまいますので、この点も注意が必要です。
労働契約締結時の個別具体的な労働条件内容は、その内容が曖昧・不明確ですと、後々の労使間トラブルの発生原因になることが多々有ります。
故に、労働法令上では所定の労働条件を記載した書面を労働者に手渡すことで足りますが、後で「見ていない」、「知らなかった」と主張されないように、同じ内容の書面を「雇用契約書」として2通作成し、労働者本人にも署名捺印させて労使双方で各々1通ずつ保管する、というやり方が賢明です。


会社には「採用の自由」が有る
労働契約締結に対しては、労働法令によって種々の制限(会社側の義務又は禁止事項)が有りますが、求人募集に応募した者を採用するか否かについては、広く会社側の「採用の自由」が認められています。
特に、裁判所の判例では、次に掲げる実際の判決で示されているように、「企業の経済活動の自由(憲法第22条及び第29条)に基づく採用の自由」が絶対視されています。

最判 昭48.12.12 三菱樹脂事件
「使用者が、特定の思想・信条を有する者を、その故をもって雇入れを拒否しても、それを当然に違法とすることは出来ない。」

最判 平15.12.22 JR採用差別事件
「労働組合員であることを理由に採用を拒否しても、特段の事情が無い限り、労働組合法で定める不当労働行為、労働組合員に対する不利益取扱い、労働組合に対する支配介入には当たらない。」
労働基準法などの労働法令は、あくまでも労働契約締結〜労働契約解約(退職)迄の労使関係を規律する法令であり、それ以前の「会社の採用可否決定行為」については、原則として労働法令の拘束は受けません


求人応募者の個人情報の取扱い
1.採用選考過程における求人応募者からの個人情報収集
採用選考過程で、次に掲げる個人情報を収集することは原則として認められません(職業安定法違反になります)ので充分ご注意下さい。
(1)応募者本人に責任の無い事項
人種、民族、社会的身分、本籍、出生地、家族の職業・収入・資産、容姿など

(2)応募者本人の個人的(プライベート)な事項
思想・信条、宗教、人生観、支持政党、愛読書・購読新聞、労働組合・学生運動の経歴など

また、採用選考後は、労働契約を締結する者以外の“応募者の個人情報”は速やかに廃棄する(又は応募者に返却する)ことをお勧めします。 なぜなら、応募者から取得した個人情報を6ヶ月以上にわたって保有すると、個人情報保護法上の「保有個人データ」となり、同法の規定が直接適用される場合があるからです。
2.応募者から採用選考時の評価結果について開示請求が有った場合
採用選考時の評価結果を開示することは、個人情報保護法に規定される「業務の適正な実施に著しい支障を及ぼす場合」に該当しますので、これを理由に開示を拒否しても何ら違法ではありません。





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愛知県名古屋市の社会保険労務士・行政書士 藤澤労務行政事務所