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       割増賃金計算の注意点

割増賃金とは?
賃金が年俸制、月給制、日給制、時間給制のいずれの形態を採っていても、割増賃金は全て時間給に換算して算定しなければなりません。
  午前5:00〜昼〜午後10:00
(深夜以外の時間帯)
午後10:00〜夜〜午前5:00
(深夜時間帯)
法定時間外労働 2割5分増し
(月60時間超⇒中小企業以外は5割増し)
5割増し
(月60時間超⇒中小企業以外は7割5分増し)
法定休日労働 3割5分増し 6割増し
法定時間外労働(又は法定休日労働)に該当しない深夜労働は2割5分増しで足ります。

法定休日労働に対しては1日の労働時間が8時間を超えても法定時間外労働にはなりません。

資本金3億円超(卸売業は1億円超、小売業・サービス業は5千万円超)且つ労働者数300人超(サービス業・卸売業は100人超、小売業は50人超)の企業は、月60時間を超える法定時間外労働に対する賃金割増率が5割増しになります。
尚、個人事業は労働者数のみをもって中小企業か否かが判断されますので、例えばアルバイト従業員を含めて51人以上の労働者を使用する飲食店の場合、労働者に月60時間を超える深夜残業をさせると7割5分増しの割増賃金を支払わなければなりません。

中小企業であっても、「厚生労働大臣が定める法定時間外労働の限度時間(原則1ヶ月45時間、1年360時間)」を超える法定時間外労働について、上記の2割5分増しを超える賃金割増率を時間外労働の労使協定で定めた場合は、その協定割増率が適用されます。
例えば、時給800円の労働者に時間外労働をさせた場合
1時間当たり1,000円(800円の2割5分増し)の残業手当を支払う必要がありますが、この残業手当のうち割増賃金に該当するのは200円(2割5分増し)の部分だけです。
残業手当の残りの800円の部分は、割増賃金ではなく追加賃金ですので注意して下さい。
なぜこのようなことを言うのかと言いますと・・・・・、
例えば、先述した時給800円の労働者の1日の所定労働時間が7時間だったとします。
この労働者に2時間の残業をさせた場合、その残業手当は、2時間分の追加賃金(1,600円)と1時間分の割増賃金(200円)の合計1,800円を支払えば足りるからです。

法律上、割増賃金の支払義務が生じる時間外労働とは、その会社の所定労働時間を超えた労働時間ではなく、法定労働時間(1日8時間又は1週40時間)を超えた労働時間です。
ですので、所定労働時間を超えて労働させても、法定労働時間内の場合は、割増賃金の支払は不要で、その超過時間に応じた追加賃金のみを支払えば足ります。

週休2日に対して1日だけ休日出勤させても、週40時間を超えた労働時間に対する2割5分増しの割増賃金の支払で足ります(3割5分増しの割増賃金の支払は不要です)。
3割5分増しの割増賃金は、その会社の所定休日労働に対して支払うものではなく、法定休日労働(1週1日又は4週4日の休日が取れなかった場合)に対して支払うものだからです。


追加賃金の不払には労働基準法第24条違反(罰金刑のみ)が適用されます。
また、割増賃金の不払には労働基準法第37条違反(懲役刑と罰金刑の両方有り)が適用されます。



労務管理に関する書籍で、『労働者に休日出勤をさせた場合、事後に代休付与を行なった場合は(休日出勤させた事実は消えない為)当該休日出勤に対する割増賃金の支払が必要だが、事前に休日振替を行なった場合は(所定労働日に労働させたに過ぎず)割増賃金の支払は不要。』と書かれている場合が多々有りますが、これは(100%間違いではありませんが)正しくありません
なぜなら、割増賃金部分の支払要/不要において代休付与と休日振替で違いが生じるのは、1週1日(又は4週4日)の法定休日の振替を行なった場合に限られるからです。
法定外休日の労働(1週40時間超労働)に対しては、事前に休日振替を行なっても、事後に代休付与を行なっても、同一週内に振替休日や代休日を設定しない限り、「1.25−1.00=0.25」の割増賃金部分を支払わなければならないという点では同じです。
尚、翌月以降に代休付与した場合は、給与計算上、休日出勤した月に一旦休日出勤日に対する賃金全額(1.25)を支払い、代休付与した月に代休日に対する賃金(1.00)を控除して精算する形になります。
(この場合、休日出勤した月の給与で「1.25−1.00=0.25」の事前精算を行なうことは賃金全額払い違反です。)

1年単位の変形労働時間制を導入している場合、所轄労働基準監督署に届出したカレンダーで「所定労働時間が40時間超の週」となっていない週については、休日振替を行なった場合でも「週40時間」の法定枠が適用されます。
また、業務の都合により頻繁に週をまたぐ休日の振替が行なわれる事業所(部署)は、変形労働時間制を導入することが出来ません。


割増賃金計算時における注意点
以下に割増賃金計算時における注意点を列挙します。
1.年俸制又は月給制の従業員の割増賃金計算
年俸制や月給制で働く労働者の割増賃金を算定する為には、まず1ヶ月平均の所定労働時間を算出した上で、その従業員の時間給を算出する必要があります。

年俸制・月給制労働者の時間給 = その労働者の月給額 ÷ 1ヶ月平均の所定労働時間

1ヶ月平均の所定労働時間    = (365日−年間の所定休日数) × 1日の所定労働時間 ÷ 12ヶ月

※「年俸制又は完全月給制なので残業代の支払は不要」という理屈は労働基準監督署では通用しませんので注意して下さい。
逆に、完全年俸制又は完全月給制であっても、遅刻・早退・欠勤等が有った場合は、当然にその時間分の賃金を所定の賃金から控除することが出来ます。

年間賞与分を含めた年俸制を採用している場合、その賞与分も割増賃金の算定対象賃金とみなされます。
これは、労働法では予め年間支給額が確定している賞与は、例え1年間に1〜3回に分けて支払われるものであっても賞与とはみなされない為です。


部門長などの管理監督者についても、深夜労働に対しては2割5分増しの割増賃金の支払が必要です。

2.労働時間が2暦日にわたる場合の割増賃金計算
この場合は、原則として始業時刻が属する日の労働時間として時間外労働時間を算定します。
但し、その労働時間が翌日の所定の始業時刻以降に及んだ場合は、前日の労働時間はその所定の始業時刻をもって打ち切りとなります。

休日労働がその翌日まで及んだ場合の割増賃金計算
休日労働に対する3割5分増しの割増賃金については「暦日単位」で算定します。
例えば、法定休日となる日曜日に休日出勤をさせてその労働時間が翌月曜日まで及んだ場合、その休日深夜労働に対する6割増しの割増賃金の対象時間は日曜日の午後24時迄です。 月曜日の午前0時以降の労働時間に対しては2割5分増しの深夜労働割増賃金のみを支払えば足ります。

3.定額残業代を含めて基本給や諸手当の額を定めている場合の注意点
例えば、定額残業代を営業手当などに含めて支払っている場合、その残業代が何時間分の残業代に相当するのか、及びその額(内訳)を賃金規程又は労働条件通知書などで明確に規定していないと、定額残業代を支払っているとは認められず、定額残業代を含んだ営業手当の全額が割増賃金の算定対象賃金とみなされますので注意して下さい。
つまり、『営業手当(残業手当含む) 月額50,000円』という定め方ではダメだということです。

4.割増賃金の算定対象賃金から除外出来る諸手当
基本給のみならず、原則として諸手当も割増賃金の算定対象賃金に含めなければなりません。 但し、次に掲げる諸手当に限り、割増賃金の算定対象賃金から除外することが出来ます。
(1)家族構成に応じて支給可否と支給額が決定される家族手当及び子女教育手当
(2)交通費実費又は通勤距離に応じて支給額が決定される通勤手当(課税・非課税を問わない)
(3)単身赴任者のみに支給される別居手当
(4)家賃(又は住宅ローン)の額等に応じて支給可否と支給額が決定される住宅手当
(5)支払期間と計算期間の両方が1ヶ月を超えている手当

特に中小零細企業においては、過去の様々な経緯から非常にたくさんの種類の諸手当が「調整給」として支給されているケースがよく見受けられます。
基本給以外の諸手当であっても、上記の(1)〜(5)に該当しない限り、割増賃金の算定対象賃金に含めなければなりません。
これらの諸手当を割増賃金の算定対象賃金から合法的に除外する為には、上記の(5)に該当するようにその諸手当の計算方法と支払方法を変更する必要が有りますが、出来高給を除き現実的にはそう簡単ではありません。
よって、余り意味の無い「名ばかり手当」は極力廃止し、可能な限り基本給と計算根拠を明確にした定額時間外手当の二本立て構成に簡素化すべきです。

5.残業代計算時における残業時間の端数処理
残業代を計算する際の残業時間は、1日毎にその都度端数処理(例えば、「15分未満切捨て」等)をすることは認められません。
最終的な残業時間の集計時に、その賃金計算期間中の累積(合計)残業時間に対してのみ端数処理(例えば、「30分未満を切捨て、30分以上を1時間に切上げ」等)を行なうことが出来ます。
但し、この端数処理を行なう為には、就業規則(賃金規程)にその定めが必要です。

・・・・・という話をすると、特に従業員の勤怠管理にタイムカードを使用している事業所の場合、「えっ!」という困惑の反応をするケースをよく見かけますが、それは、タイムカードに記録された時刻が始業・終業時刻であると誤信しているからです。
タイムカードに記録された時刻は、あくまでも各従業員の出社・退社の時刻であり始業・終業時刻ではありませんので、お間違えなく!





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愛知県名古屋市の社会保険労務士・行政書士 藤澤労務行政事務所