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       最低限知っておきたい
     労働法令と関連法令の基礎知識

事業所調査と労使間トラブルに対応する為の労働法令基礎知識
労働基準監督署の事業所調査を受ける際、労働基準監督官からの質問に対して「・・・?」という顔をしていると、「この事業主は全然分かっていないな・・・」と解釈され、次々に社内書類の提示を要求されて非常に不利な状況に陥るケースがあります。
また、実際に労使間トラブルが発生した場合、労働法令上では問題が無くても、民事上で問題となるケースも有ります。
そこで、以下に労働法令及び関連法令の上で見逃しがちなポイントを箇条書きでいくつか列挙しますので、「そんなことは分かっている」という箇所はどんどん読み飛ばして、「えっ、そうなの?」という箇所だけ一読下さい

1.年次有給休暇
(1)年次有給休暇の付与日数
現行の労働基準法では、年次有給休暇の付与日数は勤続年数に応じて10日、11日、12日、14日、16日、18日、20日と増えていきます。
ですので、入社後7年半以上経過した労働者には40日(前年付与分を含む)の年次有給休暇が付与されていなければなりません。
尚、過去1年間の出勤率が8割未満の場合は、法律上、次年度については年次有給休暇が付与されません。
(2)パートやアルバイトに対する年次有給休暇
パートタイマーやアルバイトであっても、継続6ヶ月間雇用した時点で原則として10日の年次有給休暇を付与しなければなりません。
但し、1週の所定労働時間が30時間未満の者については、週休3日の場合は0.8掛け、週休4日の場合は0.6掛けした日数を付与すれば足ります。
(3)業務に著しい支障の出る年次有給休暇請求は「権利の濫用」に該当
会社側の年休時季変更権の行使が不可能な年次有給休暇請求をした場合、又は、退職する労働者が後任者への業務引継ぎを著しく妨げるような年次有給休暇請求をした場合は、権利の濫用に該当し、本来は無効になるべき権利行使です。
とは言え、この無効を確定させる為に裁判所へ民事訴訟を提起することは現実的ではありませんし、こういった権利の濫用をする労働者に対して「会社に出て来い!」と怒鳴ったところで埒があきません。
ですので、退職予定者には効力がありませんが、少なくとも就業規則に会社の年休時季変更権が行使出来るように年次有給休暇の請求期限(「○日前迄」)と請求手続き(書面提出の義務付け)を定めておくことが重要です。
尚、労働者からの当日朝の年次有給休暇請求、及び年次有給休暇の買取請求は認める必要はありません。

2.解雇、雇止め
(1)労働者を解雇する場合
労働者の解雇は、就業規則又は労働条件通知書(雇用契約書)で予め定められた解雇事由に該当した場合に限り可能です。 が、その解雇事由が社会通念上合理性を欠く場合、民事訴訟で不当解雇と認定される場合がありますので注意が必要です。
無条件に解雇が認められるのは、労働者が刑事犯罪(社内暴力、業務上横領等)を犯した場合、正当な理由無く14日以上無断欠勤した場合、労働者本人の帰責事由により債務の本旨に従った労務提供が見込めない場合などに限られ、会社の業績不振、労働者の能力不足(勤務成績不良)、服務規律違反などを理由とした解雇は、余程慎重に進めない限り、必ず不当解雇の争いの余地が生じる、ということを認識して下さい。
(尚、解雇手当無しの即時解雇を行なうことについて、労働基準監督署長の認定は必須要件ではありません。)

会社の業績低下・事業縮小等に伴うリストラ解雇について不当解雇云々を争う裁判になった場合、(1)人員削減の必要性、(2)解雇回避努力の態様、(3)被解雇者の人選の合理性、(4)労使間協議の実施内容 といった所謂「整理解雇の4要素」に基づき解雇の有効性が判断されますが、労働基準監督署などの行政官庁は、会社が労働基準法で定めた解雇手続きを履行している限り、こういった解雇の当/不当を判断する権限は有りません。
(2)試用期間中の労働者を解雇する場合
試用期間中の見習い労働者であっても、入社日から所定休日を含めて14日以上が経過している場合は、原則として解雇手当無しで即時解雇することは出来ず、労働基準法で定められた解雇手続き(30日前迄の解雇予告又は30日分の平均賃金支払)が必要です。
(3)有期雇用労働者を雇止めする場合
「入社日からの通算雇用期間が1年を超える有期雇用労働者、又は過去に3回以上雇用契約を更新した有期雇用労働者に対して、次回の契約更新を行なわない場合は、30日前迄に雇止め予告をしなければならない」という定めは行政通達であり法律の規定ではありませんので、違反しても処罰されることはありません。
また、過去に何度となく雇用契約の更新が無条件に行なわれて形式的な有期雇用になっている場合、或いは、次回の契約更新に対して抱く従業員の期待について客観的に合理性が認められる場合は、有期雇用労働者の雇止めであっても解雇とみなされる(⇒解雇権濫用法理が類推適用される)場合が有りますが、これは個々の事例毎にその都度民事裁判で判断されることであり、労働基準監督署などの行政官庁には雇止めの有効性云々を判断する権限は有りません。
但し、雇用契約書等で具体的な雇用期間を定めていない場合や雇用契約の更新手続きを怠っていたような場合は、例えパートタイマーやアルバイトといった非正規労働者であっても「期間の定めの無い終身雇用契約」とみなされますので注意が必要です。

労働契約法の改正により、2013年(平成25年)4月以降に労働者と締結した有期雇用契約を更新して、2018年4月以降にその通算雇用期間が5年を超える場合、労働者から要求が有れば有期雇用を無期雇用に転換しなければなりません。
この場合、雇用期間のみを無期に変更すればよく、非正規雇用の労働条件を正規雇用の労働条件に変更することまでは要求されません。
また、雇用期間の通算は、6ヶ月以上対象となる有期雇用契約が1年未満の場合は直前の契約期間の1/2以上)のクーリング期間(雇入れをしない期間)を設ければリセットされます。

3.賃金
(1)現物給与を支給する場合
現物給与による賃金支払は、その現物給与支払について労働組合と締結した労働協約が適用される労働者に対してのみ行なうことが出来ます。
ですので、労働組合の無い事業所は賃金の一部を現物給与で支払うことは出来ません。
但し、これは労働時間に応じた賃金(基本給及び残業手当等)を現物給付で代替してはならないという趣旨であって、通勤手当・食事手当・住宅手当などの諸手当を現物給付で行なうことを禁止するものではありません。

(2)処罰としての減給制裁を行なう場合
賃金の減給制裁は、雇用契約や就業規則に具体的な定めがある場合に限り、労働基準法の規定に違反しない範囲で行なうことが出来ます。
即ち、一の非違行為に対する減給額は当該労働者の平均賃金(1日分)の半額が上限で、複数の非違行為に対して減給を行なう場合でも、その減給総額は一賃金支払期の賃金総額の1割を超えてはいけません(超える場合は次月以降の賃金から残り分の減給をしなければなりません)。
尚、役職の降格人事や出勤停止処分による賃金額の減少は減給制裁に該当しません。
(3)会社都合により臨時休業をさせた場合
会社側の都合で労働者を臨時休業させる場合は、労働基準法上、過去3ヶ月間の平均賃金の6割を休業手当として支払う必要がありますが、取引先(業務受託先)からの突然の仕事キャンセルや景気後退による仕事量の減少なども全て「会社側の都合」となりますので注意して下さい。
休業手当支払義務が免責されるのは、天災など不可抗力による休業の場合だけです。

尚、会社都合の休業の理由が事業主の故意又は過失によるものである場合、民事上では平均賃金全額(10割)を支払う義務があります。
なぜなら、民法536条で「債権者(使用者)の責に帰すべき事由に因って債務(労務提供)を履行出来ない時は、債務者(労働者)は反対給付(賃金全額)を受ける権利を失わない」と規定されているからです。
ですので、「解雇通告した従業員に対して休業(自宅待機)を命じれば、その解雇予告手当は平均賃金の6割(休業手当の最低限度額)を支払えば足りる」と、もっともらしく説明している書籍がたまに有りますが、これは間違いです。
平均賃金の6割を支払えば労働基準法上の罰則の適用を受けずに済む・・・というだけであって、民事上では残りの4割も支払う義務が有ります。
この場合は、原則として平均賃金の全額(10割)を支払わなければなりません。
ここで「原則として」と言っているのは、先述した民法536条(危険負担)の規定は任意規定である為、当事者間の特約が有れば、その適用を排除出来るからであり、民法536条の「債権者(使用者)の責に帰すべき事由」は、労働基準法26条の「使用者の責に帰すべき事由」よりかなり緩く解釈されているからです。
よって、新たに採用した労働者と雇用契約を締結する場合は、その雇用契約書に先述した民法規定の適用を排除する文言を入れておくことが非常に重要です。
(4)賃金から税金・労働社会保険料以外の控除を行なう場合
賃金から寮費、互助会費、社内旅行積立金など、税金・労働社会保険料以外の控除を行なう場合は、原則としてその控除について労使協定(二四協定)を締結する必要があります。
但し、民事執行法及び施行令の規定により、事業主が労働者に対して有する債権をもって、給与・賞与等の3/4(この額が33万円を超えるときは33万円)に相当する部分を差押え(控除)することは出来ません
これは、例え賃金控除に関する労使協定(二四協定)を締結していた場合でも同様です。
この場合は、面倒でも一旦賃金の全額を支払い、別途労働者から金銭を徴収する必要があります。

4.年少者(18歳未満の者)の雇用
18歳未満の労働者に対しては三六協定(時間外労働・休日労働の労使協定)を適用することが出来ないので、雇用契約で定めても原則として残業や休日出勤をさせることは出来ません。
また、深夜労働も(介護サービス事業所などを除き)原則禁止です。
更に、18歳未満の労働者を雇用する場合(学生アルバイトを含む)は、その労働者の年齢証明書を事業所に備え付ける法的義務がある為、運転免許証を持っていない若年者を雇用する場合は、必ずその者の年齢証明書類(住民票の写し等)を提出させて、履歴書に記載された年齢に偽りが無いかどうかを確認する必要があります。
尚、民事上、未成年者(=制限能力者)が雇用契約を締結する為には親権者などの法定代理人の同意が必要なので、必ず雇用契約書においてその法定代理人(親)の署名捺印を貰っておくことも重要です。

その他、労働基準監督署の事業所調査とは直接関係有りませんが、知っておいた方が良いと思われる労働法令の規定を以下に列挙します。

障害者雇用
法律で定められた一般企業の障害者雇用率は2.0%です。
ですので、原則として労働者50人に対して1人の障害者を雇用する義務があります。
また、常時200人を超える労働者を雇用する企業がこの障害者雇用率を満たしていない場合は、その不足人数1人当たり月額5万円(年額60万円)のペナルティーを政府に納付しなければなりません。
障害者雇用義務の有る企業は、毎年ハローワークに対して障害者雇用状況報告を行なう義務があります(この報告は事業所単位ではなく企業単位で行います)。

外国人雇用
外国人労働者(特別永住者、外交・公用の在留資格者、入管法研修生を除く)を雇用する事業所は、所轄のハローワークに対して、その外国人労働者の(1)氏名、(2)性別、(3)生年月日、(4)国籍、(5)在留資格、(6)在留期間、(7)雇入れ(又は離職)年月日を届出しなければなりません。
届出義務の懈怠、虚偽の届出に対しては、30万円以下の罰金刑が科されます。
尚、当然ですが、「家族滞在」、「短期滞在」、「留学(就学)」、「研修」、「文化活動」といった在留資格では(地方入国管理局等で資格外活動の許可を受けない限り)就労することが出来ません。
また、我が国において就労活動に制限の無い在留資格は、「永住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「定住者」の4つだけです。





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愛知県名古屋市の社会保険労務士・行政書士 藤澤労務行政事務所