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   退職した元社員との不測のトラブル
      に対処する為の契約書

退職者に秘密保持義務や競業避止義務を課す場合
会社在籍中の社員に対しては、その社員と締結した「雇用契約書(労働契約書)」と会社が定めた「就業規則」によって規律することが出来ますが、退職した社員に秘密保持義務競業避止義務などを課す場合は、その退職する社員と個別に契約書を取り交わす必要が有ります。
なぜなら、雇用契約書(労働契約書)で定めた内容は、原則としてその雇用契約(労働契約)の解約と共に失効しますし、就業規則の定めを退職した元社員に適用することは出来ないからです。

会社在職中に社員と個別に秘密保持契約を締結した場合で、その契約書の中に退職後の秘密保持義務を定めた条項が有る場合は、退職時にあらためて秘密保持契約を締結する必要は有りません。

1.退職者の秘密保持義務を定めた契約書
退職者に会社退職後も守ってもらいたい秘密事項として、営業上の機密、開発・製造上のノウハウ、個人情報(顧客情報や人事情報)などが有ると思いますが、まず、その秘密事項の内容(範囲)を明確に特定する必要が有ります。(尚、秘密事項と言える為には、原則としてそれが社内で秘密事項として管理されていることが条件になります。)
その上で、退職者が会社在籍中に担当した職務と、その職務上知り得た秘密事項を契約書に明記します。
次に、会社在籍中にこれらの秘密事項を社外へ持ち出していないことを誓約させて、退職後5年間(=秘密保持期間の限界)という期限を定めた上で、秘密漏洩時の損害賠償義務を定めた条項を盛り込んだ秘密保持契約を締結する必要が有ります。

但し、退職者と秘密保持契約を締結した場合でも、実際に秘密漏洩が起こった場合、退職者の故意又は過失を立証することが容易でないケースも多々有ります。 
よって、秘密保持契約締結による退職者への“心理的効果(安易な秘密漏洩の抑止効果)”を狙った契約内容にする方が現実的です。

不正競争防止法に基づき「差し止め請求の仮処分」を裁判所に請求する場合
「営業機密」と言える為には次に掲げる3つの要件を全て満たしていなければなりません。
 (1)会社の営業活動にとって非常に有益である
 (2)過去も現在も社内で営業機密として管理されている
 (3)世間に公然と知られている情報ではない
実際に会社の利益が侵害された場合は、まずその証拠の確保をしなければなりません。
損害額は(特段の事情が無い限り)営業機密の不正取得により相手方が得た利益の全額と推定されます。



2.退職者の競業避止義務を定めた契約書
退職した元社員が、会社在籍中に習得した専門技術を流用し、又は担当した顧客を横取りして、競合会社を設立したり競合会社に転職する・・・というのはよく有る話です。
こういった事態に対処する為、多くの会社で退職者と退職後の競業避止義務を定めた契約書を取り交わしていますが、退職後の競業行為禁止契約については以下の点にご注意下さい。

(1)退職者なら誰に対しても競業避止義務が課せる訳ではありません。
その退職する社員が、会社の重要な技術的ノウハウや営業機密を把握しており、一定の期間にわたって競業避止義務を課さなければ会社の正当な利益が侵害される場合に限り、必要且つ相当な限度で競合行為禁止の特約を締結出来るにとどまります。
(退職者に過度の競業避止義務を課すことは、憲法で保障する「職業選択の自由」の侵害になる為です。)

(2)地域と期間を限定しなければなりません。
例えば東海地区と九州地区というように、全く営業エリアが異なる場合は、そもそも競業には該当しません。
また、過去の判例を見ますと、競業行為禁止の特約が認められる期間は3年が上限のようです。 つまり、3年を超えるような競業避止義務を課すことは不合理(公序良俗違反)であり許されない、ということです。


退職(予定)者との間で秘密保持義務や競業避止義務を定めた契約を取り交わそうと思っても、退職を決意している労働者は「既に心ここにあらず」ですから、素直にその契約締結に応じてくれるとは限りません。
よって、こういった退職後の秘密保持や競業禁止といった特約は、その労働者の入社時に契約書を取り交わしてしまう方がより現実的です。
どんな労働者でも、採用→入社時が(会社に対して)最も従順だからです。



忘れてはならない賃金精算の確認書
意外に見落とされているのが、社員が退職する時の賃金精算に対する確認手続きです。
社員が退職する時は、会社が立て替えている金銭が有る場合はそれを返還させ、同時に未払賃金の精算処理を行なうと思います。
ですが、この時に、その退職する社員に賃金精算が全て完了した旨を記した書面に署名又は記名押印させないと後日の証明が何も残りません。

「賃金に関して、会社と退職者○○○○の間に何らの債権債務の無いことを確認する」という一文を入れた賃金精算確認書を退職者と取り交わすことを忘れないで下さい。
退職者が「会社在籍中の賃金(残業代等を含む)について全て精算が完了した」という意思表示をしたことを立証出来る書面を会社に残しておくことは非常に重要なのです。





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愛知県名古屋市の社会保険労務士・行政書士 藤澤労務行政事務所