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      労働者派遣に関する契約の注意点

派遣社員と締結する契約書
1.雇用契約書
派遣社員を雇入れる時にその派遣社員と締結する雇用契約書には、労働基準法で定められた労働条件明示事項の他に、労働者派遣法で定められた明示事項を定めなければなりません。

〈労働基準法で定められた労働条件明示事項〉
必ず明示が必要な事項 定めが有る場合は明示が必要な事項
・雇用契約期間の有無(有りの場合はその期間)
・就業場所、従事する業務
・始業/終業時刻、休憩時間
 (交替制の場合は就業時転換に関する事項)
・所定休日、休暇
・所定労働時間を超える労働の有無
・賃金の決定/計算/支払の方法、昇給
・賃金の締切日と支払日
・退職に関する事項、具体的な解雇事由
・退職手当の決定/計算/支払の方法
・臨時の賃金(賞与を含む)
・最低賃金額
・労働者負担の食費、作業用品等
・安全衛生
・災害補償、業務外傷病扶助
・職業訓練
・表彰、制裁
・休職

〈労働者派遣法で定められた明示事項〉
・従事する業務の内容(専門28業務の場合はその業務の条項番号)
・従事する事業所の名称と所在地(派遣就業する場所)
・派遣期間、派遣就業する日、派遣就業の開始/終了時刻、休憩時間
・所定の派遣就業時間を超える場合はその延長時間、所定の派遣就業日以外に就業させる場合はその日数
・派遣先責任者及び派遣就業中の指揮命令者に関する事項(氏名、部署名、連絡先など)
・派遣元責任者に関する事項(氏名、部署名、連絡先など)
・苦情処理に関する事項
 ⇒苦情処理担当者と指揮命令者を同一人物とすることは不可
・派遣契約が解除された場合に講ずる措置
・安全衛生に関する事項
・福祉の増進の為の便宜供与に関する事項
・派遣労働者本人の派遣料金又は全派遣労働者の派遣料金平均額(時間額・日額・月額等は問わない)

※その他、一定の条件に該当する場合は、以下に掲げる事項の明示も必要です。
・法令による派遣期間制限の有る派遣を行なう場合
 ⇒派遣受入期間の制限に抵触することとなる日(派遣先に確認した上で明示)
・育児休業等の代替派遣の場合
 ⇒休業する労働者の氏名、業務、休業開始日、休業終了予定日
・3年以内のプロジェクト業務への派遣の場合
 ⇒その旨
・就業日数限定派遣の場合
 ⇒その旨、及びその派遣先における通常の1ヶ月間の所定労働日数
・紹介予定派遣の場合
 ⇒その旨、及び雇用に至った場合における雇用期間の定めの有無など紹介予定派遣に関する事項


2.派遣社員への職務変更に対する同意書
既に社員として雇用している者を派遣社員として使用したい場合は、先述した労働者派遣法で定められた明示事項をその社員に明示した上で、その社員個人の同意を得なければなりません。
(社内の人事異動として、一方的な辞令により派遣社員以外の社員を派遣社員に職務変更すると労働者派遣法違反になりますのでご注意下さい。)
また、社員が派遣社員への職務変更に同意しなかった場合、その社員に対して何らかの不利益な取扱いを行なった場合も労働者派遣法違反になります。


【注意点】
(1)派遣先(顧客)が最も恐れることは派遣社員を通じた社内の機密事項漏洩ですので、派遣就業期間中のみならず、会社退職(派遣終了)後に対する「派遣先で知り得た情報の守秘義務(機密事項漏洩禁止)」を定めた規定が必要です。

(2)派遣社員の故意又は重大な過失により派遣先(顧客)に損害が生じた場合、その派遣先から損害賠償請求を受けるケースが有ります。
よって、こういった場合に、その派遣社員に対して損害賠償請求出来る(又は求償出来る)旨を定めた規定が必要です。
派遣社員が“派遣先”の顧客に損害を与えた場合
派遣社員の派遣元のみならず、派遣先にもその派遣社員に対する使用者責任が有る為、派遣先が被った損害について派遣元に対して求償権を行使した場合、特段の事由が有る場合を除き5割程度の過失相殺が適用されるようです。


(3)派遣社員の場合は、何らかの理由で派遣先から派遣契約を途中解除されますと「会社都合の休業」になり易い為、民事上その派遣社員に対して平均賃金の10割(全額)を休業手当として支払う事態に至らないように、民法第536条2項(危険負担規定)の適用を排除する特約を定めておく必要が有ります。

(4)特に登録社員の場合、同時平行して複数の派遣会社に登録することが一般的で、短期就業が中心である為、当然ながら派遣会社への帰属意識は非常に希薄です。
また、登録社員同士の横の連絡(情報交換)により、労働者としての権利行使に対しては非常に敏感ですので、登録社員の労働条件については、一般の正規社員以上に書類で細部までキッチリ取り決めをしておかないと思わぬ労使トラブルを抱えることになります。



派遣先企業と締結する契約書
派遣会社と派遣先企業の間では、「労働者派遣に関する基本契約書」と「派遣を行なう毎に締結する個別の派遣契約書」を二重に締結するケースが一般的です。
このうち、労働者派遣法などの規制により“契約自由の原則”が大幅に修正されているのは、後者の「派遣を行なう毎に締結する個別の派遣契約書」の方です。

1.労働者派遣に関する基本契約書
この基本契約書は、派遣先企業への派遣社員に対する指揮命令権付与と、その対価としての派遣料金支払を定めた“労働者派遣の根本規則”となるものです。
一般に、この基本契約書で定める事項は次に掲げるような事項です。
(1)契約の目的
(2)個別の派遣契約への委任事項と適用範囲
(3)派遣料金の決定・計算・支払に関する事項
  (特に契約当事者の一方に債務不履行が有った場合の取扱いが重要)
(4)派遣就業に伴う必要費の負担(取扱い)に関する事項
(5)派遣会社側の遵守事項、及び努力義務
(6)派遣先企業側の遵守事項、及び努力義務
(7)契約当事者の一方に契約違反(債務不履行)が有った場合の損害賠償責任
(8)派遣元責任者と派遣先責任者に関する事項
(9)派遣労働者の遵守事項
(10)派遣労働者の休暇取得と代替者派遣に関する原則的な取扱い
(11)派遣労働者交代要請に関する原則的な取扱い
(12)基本契約の解除、及び個別の派遣契約の解除に関する事項
(13)基本契約の有効期間、及び契約更新に関する事項
(14)その他、契約当事者間における特約事項


2.派遣を行なう毎に締結する個別の派遣契約書
個別の派遣契約書は、派遣会社に雇用される社員を一定期間派遣することを約すものであり、紹介予定派遣でない限り、特定の派遣社員を派遣することを約すものではありません。
ですので、その派遣期間中に派遣社員が入れ替わっても、原則として個別の派遣契約自体は何ら影響を受けません。
実際にいつからいつ迄誰を派遣するかは、「派遣先通知書」で別途派遣受入先に通知します。
この時、その派遣社員の住所や年齢(18歳未満の場合等を除く)を通知しますと、その通知に対して派遣社員本人の個別同意を得ていない限り労働者派遣法違反になりますのでご注意下さい。


個別の派遣契約書では、
(1)先述した「労働者派遣法で定められた明示事項」
(2)派遣業務毎の派遣労働者の人数
(3)派遣期間制限業務の場合は期間抵触日以降は派遣を行なわない旨
(4)派遣労働者の新たな就業の機会の確保、派遣労働者に対する休業手当等の支払いに要する費用を確保するための措置その他派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置に関する事項
を必ず定めなければなりません。
また、基本契約書による委任事項を具体的に定める必要が有ります。
ですので、派遣期間制限などの法的規制が異なる複数の業務を一括して受けた場合は、各々の業務に対して個別に派遣契約書を締結する方が合理的です。


【注意点】
(1)派遣社員との労使トラブルで多いのが、「派遣先から契約に規定されていない業務を命令された」というものです。 特に、労働者派遣法に疎い派遣受入先は、派遣社員を“便利屋”として利用しがちです。
よって、個別の派遣契約を締結する時は、派遣社員が行なう業務内容(範囲)を明確に特定すると共に、派遣先企業に対して労働者派遣における法的ルールをよく説明することが肝要です。

(2)派遣社員に時間外・休日労働、又は変形労働時間制による労働をさせる場合は、派遣会社において労使協定が締結されていなければなりません。
尚、派遣社員をみなし労働時間制や裁量労働時間制の下で労働させることは出来ません。

(3)派遣先企業と締結する労働者派遣契約は労働契約ではありませんので、損害賠償額の予定(又は違約金)を定めることが出来ます。
派遣契約書で損害賠償額の予定を定めておけば、実損害額を立証しなくても、契約の相手方に対してその損害賠償額を請求をすることが出来ます。

(4)派遣期間制限の有る業務の場合、個別の派遣契約書で契約の自動更新規定を設けることは労働者派遣法違反になります。

(5)派遣会社は、次に掲げる事項を事前に派遣先企業に通知しなければなりません。
派遣社員の氏名と性別
派遣社員が18歳未満の場合はその年齢
派遣社員が45歳以上である場合は45歳以上である旨(⇒実年齢の通知は違法です)
雇用保険、健康保険、厚生年金保険への加入有無(未加入の場合はその理由)
無期雇用/有期雇用の別
尚、派遣先企業に通知出来る事項は、行政指針により、派遣社員の業務遂行能力に関する情報に限られていますのでご注意下さい。





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愛知県名古屋市の社会保険労務士・行政書士 藤澤労務行政事務所